[【プロフィール】
福井県小浜市出身。高校卒業後、関西の大学に進学し、大阪の広告代理店に就職。2021年4月に地域おこし協力隊として、島根県立横田高校魅力化コーディネーターに着任。2024年3月に地域おこし協力隊3年間の活動を終え、引き続き、横田高校コンソーシアムマネージャーに着任。統括的な立場でコーディネーターの活動を続けている。
“昨日よりおもろい学校をつくる”
――教育の仕事は未経験だったとのことですが、どのような経緯でこの仕事に?
宮川:もともと広告代理店で働いていて、広報や企画のスキルを活かして地方に関わる仕事ができたらと思ってたんです。そんなとき、奥出雲町の地域おこし協力隊で、横田高校の魅力化に関わる人材を募集してるのを見つけて。「これやったら、自分のやってきたことが活かせるかも」と思って、えいやっと飛び込みました。
――かなり大胆な転職だったんですね。
宮川:教育現場のことも、奥出雲のことも、何も知らない状態で来ました。でも、「昨日より学校がおもろくなったらええな」っていう思いだけはあって。自分が何かを変えるっていうよりは、関わることでちょっとずつ空気が変わっていけばいいなと。
生徒募集から授業づくりまで幅広く
――現在は、どんな仕事をされていますか?
宮川:メインは生徒募集です。オープンスクールの企画、中学校への説明、広報誌の作成やSNS発信などをやっています。寮運営も見てるんで、入学前から卒業まで、生活面も含めてガッツリ生徒に関わってます。

――授業にも関わっていると伺いました。
宮川:先生たちと一緒に授業をつくっています。総合探究とか教科探究ってやつですね。数学の授業で工事現場へ測量に出かけたり、科学の授業で畜産農家さんのところへ行って、肥料の話を聞いたり。教科の中でリアルな体験をすることで、生徒たちが「なんでこれ勉強してんのやろ?」ってならんように工夫してるつもりです。

――地域とのつながりも強い印象です。
宮川:はい、小学生や中学生向けのオープンスクールもやってますし、他校と合同で探究授業したり、島根県内の特別支援学校と交流したりもしてます。中高生だけじゃなくて、小学生や幼児とも関われる機会をつくって、「学校=地域の拠点」にしていけたらと思っています。
“なんでも屋”だからこそ広がる関係性
――コーディネーターという立場の面白さって、どんなところですか?
宮川:僕は自分のことを「なんでも屋」やと思ってます。学校の中で、先生でもないし、生徒でもない。でも、そこにいる。生徒からは「先生」って呼ばれることもあれば、「みやさん」とかあだ名で呼ばれることもある。どっちでもいいんです。「相手がどう接したいか」で僕の立ち位置が決まっていく感じです。
――そういう関係性が築けるのは、信頼があるからですね。
宮川:僕の場合は先生たちに助けてもらってばかりですが、コーディネーターとしては地道なことの積み重ねが大事やと思ってます。文字の通りで、信じて頼まれるようになるには、「頼まれてはいないけど、やれそうなことは何かな?」という俯瞰した感覚で職員室にいることも重要ですね。明確な役割が決まっていない立場だからこそ、そういう動きしてると、「あ、宮川くんってそういう人なんやな」って認識してもらえるので。それがあって初めて、「先生!一緒にこんな授業つくってもらえないですか?」ってお願いもこちらから出来るようになるんです。
――今後、やってみたいことはありますか?
宮川:【先生がおもろそうに働く学校】をつくってみたいなと感じるようになってきました。教科探究型の授業実践のなかで、「生徒たちがおもろそうに学ぶ」ことと「先生がおもろそうに教える」ことに相関性があることがみえてきて、先生にとっての学校というものを探究してみたいと感じるようになったんです。
生徒や地域に対してのアプローチは業務のなかで自然発生してくるんですけど、ある意味で孤高な存在である先生に対して、コーディネーターとしてどのような価値を提供することが出来るのか。試行錯誤しながらですが、チャレンジしてみるのも「おもろそう」じゃないですか?

――本日はありがとうございました。先生が「おもろそうに働く学校」、その景色を一緒に見てみたくなりました。宮川さんのこれからの挑戦、ますます楽しみにしています。(インタビュアーより)