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2022年4月に改訂された高等学校の新学習指導要領では、変化の激しい社会の中で、生徒が自らの人生を切り拓く「生きる力」を育むことが目指されています。生徒それぞれの課題設定に対して、生徒が主体的に学習に取り組んでいく「総合的な探究の時間」の充実や、学校を核とした地方創生に推進に向けては、学校と地域社会との連携・協働が不可欠であり、その実現においては「高校コーディネーター」の役割が重要です。
高校コーディネーターは、学校と地域・企業・大学など、社会のさまざまな主体との橋渡し役を担い、生徒が実社会と接しながら学ぶ機会を創出します。外部とのネットワークを活かし、学びをデザインし、コーディネートできる人材の存在はこれからの教育にとって不可欠です。

まず知ってほしいこと コーディネーターが必要とされる背景と
期待されること

2024年は全国で313人のコーディネーターが配置され、その数は年々増加しています。この配置数の増加はコーディネーターがこれからの高校教育や地域の未来にとって極めて重要な存在であると認識されていることの表れです。ここでは高校コーディネーターについて理解を深めるために、まずその必要とされる背景、そして配置によって期待される役割についてご紹介します。

グラフ:地域みらい留学に参加する145校への調査結果

必要とされる背景_01

高まる「社会で生きる力」の必要性

グローバル化やAIの進化など、変化の激しい現代は、VUCA時代(ブーカ:Volatility=変動性、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=曖昧性という4つの単語の頭文字をとった言葉で、目まぐるしく変化する予測がむずかしい状況のこと)と言われます。こうした時代を生き抜くための力の重要性はますます高まっており、それに伴って高校教育にも新たな学びが求められるようになってきています。

POINT
社会課題への危機感意識を持つ地域は、
これからの社会を生きる力を実践的に学べるフィールド
地域は、新しい時代を切り拓いていくために必要な資質・能力を育むのに絶好のフィールドといえます。例えば、後継者不足、空き家問題などの答えのない様々な課題に多様な人たちと協力しながら取り組むことで、協働性や社会性を身につけることにつながります。

高校に求められること

閉じられた高校教育を地域に開き、 社会を生きる力が身につく学びの場をつくる

これまで、学校内部の課題は学校の中で解決するという“自前主義”の考え方が根強くありました。しかし近年では、教員の働き方改革をはじめとする学校経営の課題に対応するため、「自前主義からの脱却」が求められています。
また、「社会に開かれた教育」を実現するためには、地域の多様なステークホルダーとの関係構築や連携が不可欠です。こうした連携を推進し、地域全体で教育に関わろうとする気運を育むことで、地域はより良い学びのフィールドへと変化していきます。

コーディネーターの役割
高校と地域をつなぐ、橋渡し
コーディネーターは、連携する行政や地域の人々とコミュニケーションを重ねながら、地域の未来にとって最適な地域教育の実現に向けて意見を調整し、ハブとしての役割を果たします。
地域資源を活かした教育環境づくり
総合的な探究の時間の運営に向けて、地域内外との関係者と信頼関係を構築しながら、授業の運営や調整をサポートします。実際の活動では、プログラムの運営にも積極的に携わったり、一緒に授業づくりに取り組む場合もあります。
さらに期待できること
地域の多様な関係者が教育に関わることで… 地域全体で若者の未来を育んでいこうとする機運の醸成
地域が抱える課題が多様化するなかで、教育の役割は学校の中だけにとどまらず、地域全体で若者の未来を育む視点が求められています。地域内外の多様な資源や人材を活かしながら、生徒たちが多様な学びや経験を得られる教育環境を整えることが重要です。
コーディネーターの役割の一つは、地域と学校、企業、行政のハブとなり、持続可能な連携体制を構築すること。地域の人々とともに教育環境を創り、学校と地域の共存・発展を支えることが期待されています。
地域の課題や魅力を知ることで… 地域を活躍の場として選ぶ人材づくり
「社会に開かれた教育課程」のもとで学んだ生徒は、主体的に卒業後の進路を選び、将来的に地域へUターンしたり、地域外から地元に関わったりと、意志ある人材の還流を生み出します。また、地域での多様な挑戦や取り組みは、教育移住やIターンなど、地域外からの新たな人の流入にもつながり、持続可能な地域づくりの基盤となります。こうして、さまざまな人が地域を「活躍のフィールド」として選ぶことにより、地域の魅力を活かした新たなイノベーションの創出も期待されます。

必要とされる背景_01

人口減少により地域から高校がなくなる危機

近年の人口減少と都市部への人の流出により、地方では高校の統廃合が進んでいます。地域から高校がなくなること、また高校数の減少による進学先の選択肢や競争機会の低下は、生徒が都市部など遠隔地の高校を選ぶ要因となり、結果としてさらなる人口流出を招いています。高校がなくなることで、生徒だけでなく、教員や学校運営に関わる人々とその家族も地域を離れることになり、ひいては日本文化を形づくってきた「地域」そのものの存続が危ぶまれる事態となりかねません。

高校に求められること

魅力ある高校になることで、 人口流出を抑え、流入を増やす

魅力的な学習や活動が展開されている高校になることで、地域外からの生徒の流入が期待されます。こうした学びの機会は、生徒に地域への愛着を育むきっかけにもなり、卒業後の定着にもつながる可能性があります。さらに、魅力的な教育活動に関心をもつ大人たちの関わりを通じて、関係人口の増加も見込まれます。人口減少や流出といった課題を抱える地域にとって、これらは重要な課題解決の手段となり得ます。

コーディネーターの役割
高校を核とした地方創生
地域内外の生徒や保護者に「この学校に通いたい!」と思ってもらえるような情報発信や、学校の特色づくりを推進します。 具体的な活動についてはこちら
What's coordinator What's coordinator

仕事内容 3つのコーディネート機能

コーディネーターが必要とされている背景には、様々な社会的な背景があり、次のような役割があります。

コーディネーターの役割

  • 高校と地域をつなぐ、橋渡し
  • 地域資源を活かした教育環境づくり

役割を実行するために具体的には、学校と地域それぞれのコーディネート機能と相互が協働体制をつくるためのコーディネート機能を担います。

学校におけるコーディネート機能
高校と連携した地域をフィールドとした
学習の企画や運営まで広くサポートを行います。
  • 地域と連携した学習に関する地域側との連絡調整
  • 学校における地域の資源活用支援
  • 地域との連携・協働に関わる研修の企画・運営
  • 地域社会と関わる教育課程の企画・運営支援
地域におけるコーディネート機能
地域の人や企業・団体と関係性を構築しながら、
高校生との「橋渡し」を行います。
  • 地域の資源の開拓
  • 学校との連携に関する地域団体等への情報共有
  • 地域留学など、新たな人の流れを生み出すための企画・運営
  • 地域の課題解決に向けた地域の担い手の育成
協働体制をつくるためのコーディネート機能
地域の人や企業・団体と関係性を構築しながら、
高校生との「橋渡し」を行います。
  • 組織体制の構築・運営
  • 外部資源の獲得(資金調達等)
  • 大学・研究機関・民間企業との連携・協働
What's coordinator What's coordinator

どんな人が向いてる? 自分らしさが活きる

コーディネーターの仕事は、特別な資格や経歴がなくても誰でもチャレンジできます。高校と地域という異なるフィールドをつなぎ、多様なステークホルダーとの関係を築いていく仕事のため、教育者や地元出身者である必要はありません。それぞれの個性やスキルを活かしながら、自分らしい関わり方で活動することができます。

資格やスキルに制限されない

教育現場の経験がなくてもできる
学校現場に関わるからといってコーディネーターにはその経験が必要不可欠というわけではありません。地域におけるコーディネートという重要な部分で十分サポートができれば、学校におけるコーディネート部分は先生たちと必要に応じて、役割分担しながら十分に担うことができます。
馴染みのある地域でなくてもできる
「地域と関わる」と聞くと、地元や顔なじみがいる場所でなければできないのでは、と思われがちですが、仕事をスタートしてから、地域との関係性を一から築いていく形でもまったく問題ありません。むしろ、外部からの客観的な視点が地域にとって有益に働くケースも多く、必ずしも馴染みのある土地である必要はありません。また、地域おこし協力隊として着任する方も多く、移住という選択も十分に現実的で、歓迎されます。

DATA

70%が教育現場未経験者
「高校に関わる仕事」と聞くと、現役または元教員が着任するイメージを持たれがちですが、実際には6割以上が民間企業からの転職者です。地域との連携においては、社会人としての経験が大いに活かされるほか、学校外の視点が高校生の学びに新たな刺激を与えることもあり、民間出身者ならではの強みが多くあります。 未経験/経験(一財)地域・教育魅力化プラットフォーム調査
(2018年 回答者数35名/島根県内)
雇用形態も様々
コーディネーターの雇用形態は自治体や受け入れ団体によって異なり、地域おこし協力隊としての任用、NPO等を通じた業務委託、会計年度任用職員、常勤職員としての採用など多岐にわたります。
地域の特性や働き方のスタイルに合わせて、多様な関わり方が可能なこともこの仕事の特徴です。
雇用形態(一財)地域・教育魅力化プラットフォーム調査
(2023年回答者数89名/全国)

自分だからできることをする

必要な行動を自分で見つける、決める
コーディネーターの活動には、「これを必ずしなければならない」「これはしなくてもよい」といった明確な決まりはありません。地域ごとに求められる業務内容や関わり方も異なるため、その時々の「必要」に応じて柔軟に動くことが求められます。一緒に取り組む関係者と相談をしながら、自分にとってやりやすい方法を選んで取り組むことができます。
自分のできる範囲で役割を担う
コーディネーターの関わり方はマネージャー、プレイヤー、サポーターの3つがあり、一人で全て担うこともあれば、複数人でチームとして活動することもあります。教育現場での経験がなくても、地域と連携の部分を担う、全体の細かな部分をサポートするなど自分のできる部分で役割を担うという関わり方もあります。
關わり方 業務内容 こんな方におすすめ
マネージャー 地域や教育に関わるさまざまな課題を把握し、その解決に向けた道筋を描く全体を統括。
  • これからの地域や教育の在り方を考えたい
プレイヤー 地域や教育における課題に対し、解決に向けた計画の立案から実行、そして改善に至るまで。
  • 地域の様々な人とつながりがある
  • コミュニケーションが好き
  • 地域のために何かしたい
サポーター 現場に寄り添いながら、計画の実現を支援。
  • 支える役割が好き
  • 地域の様々な人とつながりがある
  • 経験を積みたい

活動は、コーディネーターのスキルや経歴、特技といった個性により多岐にわたります。
具体的な活動については、インタビューを参考にしてください。

インタビュー一覧
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