コーディネート機能とは

高校と地域をつなぐコーディネート機能

高校と地域の協働による魅力ある高校づくりを推進するうえで鍵となるのは、コーディネート機能です。
このページでは、「学校と地域をつなぐ人材の在り方研究会」(文部科学省,2019)において議論した内容をご紹介します。
研究会では、学校と地域をつなぐうえで必要とされるコーディネート機能を以下の3つに整理しています。

⾼校におけるコーディネート機能

  • 地域社会と関わる教育課程の企画・運営・支援
  • 学校側との連絡調整・情報提供
  • 学校への地域資源の活用
  • 地域系部活動等の教育課程外の地域探究や活動の支援
  • 地域との連携・協働に係る研修の企画・実施 など
     

実現に
向けて

  • 教員養成過程・教職員研修等を通して、教職員にコーディネーター的資源を育成していく(社会教育の取得・活用も促進)
  • 地域との連携・協働の機能と役割を学校に位置づけ、地域との連携・協働の中核となる地域連携担当教職員等を配置する(主幹教諭・実習助手・事務職員等の役割の改善等)
  • コーディネート機能の一部として、地域人材や外部人材を活用できるようにする(カリキュラム開発専門家、地域協働学習実施支援員の制度化 等)

地域におけるコーディネート機能

  • 地域資源(人・もの・こと・課題等)の掘り起こし
  • 学校側との連絡調整・情報提供
  • 学校外での高校生を含む活動の企画・支援
  • 地域留学等新しい人の流れをつくる企画・調整(下宿等含む)
  • 卒業生とのつながり構築や活動支援 など

実現に
向けて

  • 社会教育士等も活用し、地域において中核となるコーディネート人材の育成を進める
  • 地域学校協働活動推進員の仕組みを高校で活用しやすいよう工夫し、配置・活用できるようにする
  • 地方創生推進交付金、過疎債等を活用してコーディネート人材を配置・活用する など
     
     
     

協働体制におけるコーディネート機能

  • 組織体制の構築・運営(ビジョン・計画づくり、事業・会議の運営等)
  • 外部資源獲得(ふるさと納税、寄付等)
  • 大学・民間企業等との連携・協働 など

実現に
向けて

  • 学校運営協議会制度地域学校協働本部等の仕組みを高校で一体的に活用しやすいように工夫し、高校と市町村や公民館・NPO・大学等の持続可能で効果的な協働体制(コンソーシアム等)の構築を促進する
  • 地域おこし企業人、地域力創造アドバイザー、CSアドバイザー等を有効に活用し、協働体制の立ち上げ展開を促進する

※1 高校・地域の状況により、どのような立場の人材・仕組みがその役割を果たすかは異なります。
参考:学校と地域をつなぐ人材の在り方に関する研究会

さらに、3つの機能を、具体的な役割に分け、求められる内容によって、マネージャー、プレーヤー、サポーターと3段階に分けることができます。それぞれの高校・地域に全ての機能が必要なわけではなく、自分の地域に必要な機能はどの部分かを見極め、それを現状誰(または組織)が担っているのか、もしくは必要にもかかわらず担えていないのかを分析することで、次のステップが見えてくると考えます。

マネージャー 課題を設定し解決の枠組みを整え、全体を統括する
プレーヤー 設定された課題に対して、計画を立案・実行・改善する
サポーター 現場に寄り添いながら、計画の実現を支援する

コーディネート人材とは?

自分の地域に必要なコーディネート機能を整理するなかで、必要にもかかわらず既存のチームや組織で手が打てていないとき、次のステップとして考えられるのが専門人材としての「コーディネーター」の配置です。

島根県には、2020年5月現在でコーディネーターが51人います(島根県教育委員会調査,2020)。ここでいうコーディネーターとは、県立高校を活動拠点としながら、学校と地域をつなぐコーディネート機能を担っている存在です。島根県においては、2012年頃から「高校魅力化コーディネーター」として活動するコーディネーターは、市町村が雇用するケースが大半を占め、前職は人材・広告・人材・IT等の民間企業の経験者や元教職員などが多く、年齢も30代前後であり、都市部からのIターン者が多いのも特徴でした。

島根県高校魅力化コーディネーターdata

なお、2012~2016年前後に島根県立隠岐島前高校や一部の高校でコーディネーターが配置された時期には、役割の整理も十分ではなく、コーディネート機能を1人で担おうとしているケースも少なくありませんでした。
その後、津和野高校のようにコーディネーターが複数人配置されるケースや、雲南市のように、市とNPO法人がタッグを組み、市内2校に計5人のコーディネーターを配置するなど、コーディネート機能をチームで担う動きも複数生まれてきました。

 

島根県における高校魅力化コーディネーターのインタビュー記事についてこちらをご覧ください。
高校魅力化コーディネーターという仕事」(PDF;4.5MB)2018年

「コーディネーターという仕事2020(PDF;3.0MB)

 

全国におけるコーディネーター調査

2018年度には、全国都道府県教育長協議会第2部会で全国調査が実施され、公立高校におけるコーディネーターは全国で140名いることが明らかになりました。

[全国都道府県教育長協議会第2部会, 2019]
地域と学校の連携・協働におけるコーディネート機能の強化・充実
~今後、求められるコーディネーターの在り方~報告書~

この調査によると、地域と学校の連携・協働におけるコーディネート機能の強化・充実のためのコーディネーターの必要性については、47都道府県中43県(以下、都道府も含めて県と表記)が「必要」と回答しており、ほとんどの都道府県がその必要性を認識しています。
また、コーディネーターを配置することにより見込まれる成果・効果としては、「学校と地域の関係性が深まる」が35県と最も多く、次いで「学校と地域が連携・協働した教育活動の継続性につながる」が34県、「各地域の特色を活かした教育活動が見られるようになる」が31県となっています。

一方で、コーディネーターを配置する上で課題と考えていることは、「コーディネーターを担う人材がいない」が27県と最も多く、次いで「雇用等に係る経費負担が大きい」が24県、「学校や行政におけるコーディネーターの役割に対する理解が不十分」が18県と順に多くなっています。こうした課題に対して、地域と学校の連携・協働におけるコーディネート機能の強化・充実に向けて行政に求められる役割を尋ねたところ、国・都道府県・市町村で求める役割が異なることが見えてきました。

コーディネート機能の充実に向けて

「社会に開かれた教育課程」と「高校を核とした地方創生」の実現の流れを推進していくために、今後、コーディネート機能の充実に向けて、それぞれの立場でどのようなことに取り組んでいけばよいでしょうか?

文部科学省2019年度「地域と協働による高等学校改革推進事業」PDCAサイクル構築のための調査研究「高校と地域をつなぐ人材の在り方に関する研究会」にて、以下のような議論を行っています。

持続可能な人づくり・地域づくりの循環に向けたコーディネート機能の役割とは?

これからの社会を生きる子どもたち一人一人に「生きる力」を育成するために、新学習指導要領では「社会に開かれた教育課程」という考え方が掲げられている。地方創生の文脈においても、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、地方への移住・定着の推進に向けた若者の修学・就業による地方への定着の推進に際し、「高等学校の機能強化等」が掲げられた。その地域で育つ子どもたちの成長を軸に、教育と地方創生を両輪と捉えて進めていく必要があると言える。

そうした取り組みの先行事例では、高校と地域をつなぐ「コーディネーター」等と呼ばれる人材が重要であることが示唆されている。コーディネーター(コーディネート人材)にとどまらない組織等も含めた高校と地域をつなぐコーディネート機能を充実させることで、生徒や地域は以下のように変化し、持続可能な人づくり・地域づくりの循環ができていく。

高校と地域の協働による生徒の成長と地域の変化イメージ

必要なコーディネート機能(人材・組織)とはどのようなものか?

持続可能な人づくり・地域づくりの循環をつくるために必要なコーディネート機能を整理すると、以下の3つが必要であることが、先行事例からは見て取れる。

高校から地域に働きかけるコーディネート機能(主に「社会に開かれた教育課程の実現」を目指す)
・地域住民との関係を築きながら地域と高校をつなぐコーディネート機能(主に「高校を核とした地方創生」を目指す)
・高校と地域の協働体制におけるコーディネート機能

高校・地域のそれぞれの状況により、どのような立場の人材(もしくは組織や仕組み)がその機能を果たすかは異なるが、それぞれに含まれる役割は以下のようなものに整理される。

各高校・各地域が必要に応じてそれぞれの機能を充実させられるようにするためには、省庁横断で制度の活用・改善・構築を行っていく必要がある。また、こうした制度等は高校や地域が実情に合わせて選択できるようにする必要がある。

高校と地域をつなぐコーディネート人材の配置、高校における学校運営協議会・地域学校協働活動の一体的推進のイメージ

こうした課題を越えるための新たな人材配置のイメージは、高校における地域とのコーディネート機能、特に、地域と連携した教育課程の中核としての役割を担うカリキュラムマネージャー(仮称)と、高校と地域の協働体制におけるコーディネート機能を担う、コンソーシアムマネージャー(仮称)を置くというものである。

さらに、人材を配置するだけではなく、学校運営協議会と地域学校協働活動を一体的に推進し、「社会に開かれた教育課程の実現」と「学校を核とした地域創生」の好循環の基盤となる協働の組織体制(地域高校魅力化コンソーシアム)を構築することで、より効果が発揮されると考える。

高校と地域をつなぐコーディネート機能の充実に向けた今後の方向性

「社会に開かれた教育課程」と「高校を核とした地方創生」の実現の流れを推進していくため、コーディネート機能の充実に向けて、立場ごとで取り組むべきことを考えてみたい。

第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(PDF)では、地方への移住・定着の推進に向けて、高等学校の機能強化等が掲げられ、同「政策パッケージ」には具体の施策と合わせて、次の工程表が組まれている(P34 参照)

また、都道府県単位及び全国で、各高校・地域の実践の支援や、各高校・地域の知見の共有や学びあいを促進する協働体制と仕組みの構築も必要である。

協働体制と仕組みの構築について

各地で対話を通じて、それぞれにとって必要な形を検討する必要があると研究会ではまとめられています。研究会の資料・議事録等について詳しくは文科省ホームページをご覧ください。

高校と地域をつなぐ人材の在り方に関する研究会 報告書(PDF9.0MB)

高校と地域をつなぐ人材の在り方に関する報告書(概要版)(PDF;1.2MB)

コーディネーターの道具

現場で活動するコーディネーターが活用できるツール(道具)を紹介しています。ぜひ、「こんな取り組みををしています!」「こんなツールが欲しい!」といった声があればこちらまでお問い合わせください。

 

社会に開かれた学校をつくるヒント集
学校と地域をつなぐパターン・ランゲージ

(一財)地域・教育魅力化プラットフォームは、(株)クリエイティブシフト(本社:横浜市;代表取締役社長 井庭崇)の制作支援をうけ、社会に開かれた学校をつくるヒントをまとめた『学校と地域をつなぐパターン・ランゲージ―社会に開かれた学校をつくる旅―』を開発しました。

次期学習指導要領で示された「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて、当社は学校と地域の連携・協働を推進する「コーディネーター」の役割に注目し、島根県内で実際にコーディネーターとして働いている方々の工夫やコツを抽出し、多くの人が実践できるようにまとめました。
プレスリリースはこちら(2018年3月)詳しくはこちらから

 

■カードの使い方 その1「自分の普段の仕事を振り返る」

パターンは、5つのカテゴリーと14のグループに分かれています。自分が普段実践していること、していないことをチェックしてみたり、チャート図に表したりして可視化してみると 、自分自身の全 体 的な傾 向を把 握でき 、周りの人と話すときにも役立ちます。定期的な振り返りとして習慣にしたり、迷ったときに立ち止まって考える材 料にしてもいいかもしれません。

■カードの使い方 その2「チームで使ってみよう」

テーブル の上にパターン・カードを並べて3人~5人で対話をするのがおすすめです。自分が「大事にしているもの」など、あなたの経験をパターンをもとに自由に話してみましょう。また、チーム内での振り返りにも活用できます。複数人で行うときには、話し合いながら進めるプロセスが学びになりチームの成長につながります。

42のパターン一覧は、ブックレットに記載されています。

ブックレットのダウンロード申込フォーム

■カードの使い方 その3「日常でパターンに触れる」

コーディネーターのパターンを日常生活で感じることができるようにと、掲示用ポスターを作成しました。

パターンランゲージ掲示用ポスターのダウンロード申込フォーム

※フォームに必要事項をご記入いただくと、ダウンロードが可能なリンクが表示されます。
※ブックレットについては在庫切れです。

 

miryokuka@c-mirai.jp  まで、お問い合わせください

件名「パターンランゲージカードの購入について」
お名前:
ご住所:
所属:
購入冊数:
電話番号:
メールアドレス:
お支払い方法:銀行振込となります。
※カードは1冊3500円(税別)+送料となりますので、上記まで必要事項を記載しお問い合わせください。

 

高校魅力化に関連する書籍

地域協働による高校魅力化ガイド(岩波書店,2018)
学校が地域社会に開かれると、どんな可能性や好循環が生まれるのか? 地域課題探求学習、コーディネーター活用、協働の体制づくり、地域留学、取り組みの評価など。注目を集めた隠岐島前をはじめ、全国各地での「地域と高校がともに活性化する」事例が満載、改革の必読書。
ご注文はこちらから

未来を変えた島の学校(岩波書店,2015)
人口減少や少子高齢化が深刻な過疎の地で、何が改革の原動力となったのか。海士町、西ノ島町、知夫村、三つの島の協働が日本の未来を牽引する。教員、行政、地域住民、ヨソモノ等による人づくりの物語。
ご注文はこちらから

地域協働による高校魅力化ガイド(岩波書店)

 

コーディネーター配置・活用の手引き(島根県)

島根県教育委員会が平成31年2月に策定した「県立高校魅力化ビジョン」において、地域資源を活用した特色ある教育課程の構築に向け、地域と高校の両者をつなぐ存在としての高校魅力化コーディネーターを県教育委員会と自治体等が連携しながら養成・確保・育成することが明記されました。
今後も多くの高校魅力化コーディネーターが活躍し、「教育の魅力化」がより一層推進されるためにも、高校魅力化コーディネーターを配置している、あるいは今後配置を検討している高校関係者や自治体担当者に向けて、それぞれの条件や環境に応じたコーディネーターの在り方を模索するためのツールとして、別添のとおり「高校魅力化コーディネーター配置・活用の手引き」を策定しましたのでご活用ください。

関連資料はこちら

教育魅力化に関わる人材のネットワーク

高校魅力化に関わるコーディネーターや教職員、自治体関係者の全国に広がりつつあります。これまでに以下のような育成プログラムやフォーラム等が開催されています。
島根大学「地域・教育コーディネーター養成講座」

東北工科芸術大学「SCH(スーパーコミュニティハイスクール)ネットワーク」
第6回SCHシンポジウムの記事はこちら