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【インタビュー】チームで進める魅力化

update:2020.12.23

広島県立大崎海星高校 コーディネーター 取釜宏之さん

「『このままでは高校がなくなる』と、目の前のことに必死に取り組んできました」。

広島県大崎上島町にある県立大崎海星高校のコーディネーター、取釜宏行さんはそう話す。町と高校は、2014年の高校統廃合の危機をきっかけに「魅力化」に取り組み始めた。変化は着実に表れていて、島外からの「留学」希望者が増え、島内の中学生からも進学先としても選ばれるようになった。でも、大崎上島が注目されているのは“数字”ではない。取り組みを進める“チーム”の存在だ。

2014年 廃校の危機迫る

瀬戸内海に浮かぶ島の一つに大崎上島はある。人口は約8000人。

海賊・海運の島として古くから知られこの島は、周辺の島々が本土と橋でつながる中、今でも「離島」のまま。その代わりに、広島や愛媛とつながる航路が1日に何度も行き来し、島の内外へ通勤・通学する人も少なくない。造船業も、かつての勢いはないにしても町の主幹産業で、昔も今も「船の町」であることに変わりはない。

そんな島で、町唯一の県立高校、大崎海星高校に廃校の危機が迫ったのは、2014年のことだ。

2月、広島県教育委員会が「今後の県立高等学校の在り方に係る基本計画」を発表。各学校は「学校活性化地域協議会」を設置して生徒増を目指し、3年の猶予期間の後、在籍生徒数が2年連続80名未満となった場合には、統廃合などが検討されてしまうことになった。
取釜さんらは、この計画を知ったとき、「このままでは、ほんまに高校がなくなってしまう」と焦ったという。島では人口は減り、そもそも中学生が減っていた。それ以上に、進学先としては避けれがちで、島外の高校に進む子どもが多いという事実もあった。当時の全校生徒は67人。島内進学率も30.2%と低迷していて、「廃校」は現実的な言葉だったのだ。

仕事図鑑が「入り口」に

「何かできることはないか」と悩んでいた取釜さんと同じくコーディネーターを務める円光歩さんが取り掛かったのが、高校生と作る「島の仕事図鑑」だった。この仕事図鑑が、後に魅力化を進めるチームの「入り口」になっていく。

取釜さんによれば、仕事図鑑は、町の商工会の定住・移住を推進する事業の一環。島で働くさまざまな業種の魅力を紹介しよう、それも、高校生が紹介する企画にしようと、取釜さんが提案して始まったという。
10月に始まったプロジェクトには、海星高校と広島商船高等専門学校の有志が参加。造船業や農業に就く28組の大人たちにインタビューし、写真を撮り、その素材をプロのデザイナーが組み上げた。

生徒の変化はすぐに表れた。
ある生徒は、最初のインタビューではなかなか相手とうまく話すことができなかった。それが、回数を重ねるごとにアドリブの質問も飛び出すように。大人とのコミュニケーションが自然とできるようになっていった。それを見た教員たちも変化に驚き、喜んでいたという。
「この仕事図鑑で始まったのがよかった」と取釜さんは振り返る。
「『地域に出るだけで、こんなに生徒が変わるんだ』『島には、生き生きとした大人がこんなにいるんだ』と納得するきっかけになりました。『魅力化』ではどんなことをするのか、どんな効果があるのかというイメージが、本格的に始まる前に共有できたことは大きかったと思います」
仕事図鑑は町内でも好評で、「第2弾はいつなのか」という声もすぐに上がったという。

取釜さんによれば、仕事図鑑は、町の商工会の定住・移住を推進する事業の一環。島で働くさまざまな業種の魅力を紹介しよう、それも、高校生が紹介する企画にしようと、取釜さんが提案して始まったという。
10月に始まったプロジェクトには、海星高校と広島商船高等専門学校の有志が参加。造船業や農業に就く28組の大人たちにインタビューし、写真を撮り、その素材をプロのデザイナーが組み上げた。

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生徒の変化はすぐに表れた。
ある生徒は、最初のインタビューではなかなか相手とうまく話すことができなかった。それが、回数を重ねるごとにアドリブの質問も飛び出すように。大人とのコミュニケーションが自然とできるようになっていった。それを見た教員たちも変化に驚き、喜んでいたという。
「この仕事図鑑で始まったのがよかった」と取釜さんは振り返る。
「『地域に出るだけで、こんなに生徒が変わるんだ』『島には、生き生きとした大人がこんなにいるんだ』と納得するきっかけになりました。『魅力化』ではどんなことをするのか、どんな効果があるのかというイメージが、本格的に始まる前に共有できたことは大きかったと思います」
仕事図鑑は町内でも好評で、「第2弾はいつなのか」という声もすぐに上がったという。

魅力化の本格的な始まりは翌15年春。それに先行して、学校はが魅力化推進チームを立ち上げ、取釜さんを地域のコーディネーターとして招き入れた。
取釜さんは言う。
「町長は『島から高校がなくなったら危ない』と積極的で、当時の校長も『地域とのハードルはゼロにする』と魅力化に前向きでした。トップの二人がそういう姿勢を示してくれたことで、『なぜやるのか』ではなくて、『どうやるのか』から始めることができました」

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チームだから続いていく

取材を続けていると、大崎上島ではそれぞれの関係者や団体が「チーム」として動いていることに気づく。コーディネーターも町役場の担当者も、魅力化を担当する教員も、「一人」では動かない。
「一人が全部やったらだめ」と当時の大林秀則校長が繰り返し言っていた、と取釜さんは振り返る。「教員も役場も異動がある。人が変わっても続くためには、プロジェクトは2人以上でやる必要がある。
「先生たちも前向きで、担当じゃなくても『来年はやるかもしれない』と集まりに顔を出してくれる人もいます。ありがたいですね」と取釜さんは話す。
2019年度からは、高校の教員研修に「魅力化」が組み込まれるように。魅力化の理解をする人が増えていく中で、応援してくれる人も増えた。そのことで、学校全体の雰囲気も「前向き」に変わっていったという。2019年度の全校生徒数は、県外留学生14人を含む102人にまで増えた。
「海星高校は面白い」と2020年度から校長に就任した大久保信行校長も言う。
「学校が『動いている』んです。先生たちからも新しいアイデアがどんどん出てくる。地域の人や役場と学校をつなぐ、地域の声を学校に届けてくれるコーディネーターの存在の大きさを感じています」

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地域が変わっていく

高校だけでなく、島全体でも変化が生まれつつある。「教育の島」を掲げる町は新たな県立中高一貫校の誘致に成功し、2019年に広島叡智学園が開校した。「義務教育以降」と役場との連携を深めるために、町は「教育の島推進室」を設置。町を挙げての魅力化がさらに進もうとしている。
推進室の主任主事、古坂圭さんも「町内の中学生にとって、海星高校が積極的な選択肢になっている。魅力化の効果は大きいと思います」と話す。
島で出会った住民たちも「最近、頑張っているね」「応援したい」と口々に話していた。高校を中心に始まった「魅力化」は、すでに町中に広がり始めている。

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広島県立大崎海星高等学校
広島県豊田郡大崎上島町に位置する、広島県立大崎海星高等学校。生徒数の減少により廃校の危機にさらされていた2015年に高校魅力化プロジェクトがスタート。全国募集の他、「大崎上島学」や公営塾「神峰学舎」、地域住民や地元企業と連携した「島の仕事図鑑」などに次々と着手。2020年現在、生徒数が右肩上がりに増加し、全国各地から入学希望者が訪れる高校へと変貌を遂げている。2017年度「キャリア教育優良校」文部科学大臣表彰を受賞。

※本記事はnoteにも掲載しています。